• ぢーこ

「あっ しまった」


その昔、子ども達と考えた童話を、どこかに残しておきたくなったので、こちらのブログに貼っておきます。 もしも、絵を描くのが好きな方が、絵本にしてくださるなら、こんな幸せなことはないので、どうぞ素材として使ってやってください。

「あっ しまった!」

ある日、クモが丈夫な丈夫な巣をこしらえました。

大きなケヤキの木に何度も練習して

「これなら大丈夫。どんな大風が吹いても、絶対破れないぞ。」

と思えるような立派な巣ができました。 

クモは、ケヤキの葉の裏にかくれて虫がかかるのを待ちました。

しばらくして、チョウが巣にかかりました。

「いや~ん たすけてえ!」

どんなに羽をバタバタしても巣はびくともしません。

べたべたの糸にますますくっついてしまうだけです。

クモは、自分がべたべたの糸に絡まらないように、気を付けてゆっくりチョウに近づきました。

その時、強い風が吹いてきました。

「あっ、しまった!」

クモは、風にあおられて、べたべたの糸にくっついてしまいました。

**

その様子を木の下で見ている者がおりました。カエルです。

「しめしめ。クモとチョウが食べられるぞ。」

カエルは、いそいそとケヤキの木を登っていきました。

「うわー、カエルだ!助けてくれえ」

木の上にたどり着いたカエルが、口から長い舌を出してクモを食べようとしたその時、強い風が吹いてきました。

「あっ、しまった!」

カエルは 風にあおられて、べたべたの糸にくっついてしまいました。

**

その様子を近くのくさむらの中から見ている者がおりました。ヘビです。

「しめしめ。カエルが食べられるぞ。」

ヘビはにょろにょろとケヤキの木をのぼっていきました。

「ゲロゲロ、ヘビだ!助けてくれえ」

ヘビが、首をのばしてカエルを食べようとしたその時、強い風が吹いてきました。

「あっ、しまった!」

ヘビは、風にあおられてべたべたの糸にくっついてしまいました。

その様子を空の上から見ている者がおりました。タカです。

「しめしめ。ヘビが食べられるぞ。」

タカは急降下で巣に近づきました。

「どひゃ~、タカだ!助けてくれえ」

タカのくちばしが、もうちょっとでヘビに届きそうなその時、強い風が吹いてきました。

「あっ、しまった!」

タカは、風にあおられてべたべたの糸にくっついてしまいました。

**

その様子を小屋の中から見ている者がおりました。猟師です。

「しめしめ。タカの生け捕りだ。」

猟師は、ひょいひょいとケヤキの木にのぼっていきました。

「ぐへえ、人間だ!助けてくれえ!」

猟師がタカをつかまえようとしたその時、強い風が吹いてきました。

「あっ、しまった!」

猟師は、枝から転がり落ちてべたべたの糸にくっついてしまいました。

**

その様子を雲の上から見ている者がおりました。神様です。

「ありゃりゃ、あれはなんとしたことだ。助けてやらねば。」

神様は、雲をあやつってケヤキの木に近づきました。

「おお、神様だ!これで助かったぞ。」

みんなは、喜んで神様を見上げました。

神様が、まずは人間を助けてやろうと猟師に手をのばしたその時、強い風が吹いてきました。

「あっ、しまった!」

神様は、雲から転がり落ちて、べたべたの糸にくっついてしまいました。

**

チョウと、くもと、カエルと、ヘビと、タカと、猟師と、神様は、そのままはらぺこで二日間を過ごしました。

三日目に、近くの村の子ども達が、クモの巣にかかったチョウと、くもと、カエルと、ヘビと、タカと、猟師と、神様に気づいて大人を呼びに行きました。

村の大人達は、それを見て 

「なんてまぬけなんだ」

と指をさして大笑いしました。

クモの巣にかかった者達は、お腹がすいて気が立っていたので、ものすごく腹を立てました。

とくに神様は

「なんてばちあたりな村人達だ。まとめて地獄に落としてやる」

と思いました。

**

四日目になりました。

この日は、朝から誰も来ませんでした。

なぜなら、台風がきていたからです。

クモの巣は、風にあおられてびゅわんびゅわんとゆれました。

チョウと、くもと、カエルと、ヘビと、タカと、猟師と、神様も一緒にびゅわんびゅわんとゆれました。

そして、丈夫な丈夫なクモの巣も、ついにぶつんと切れてしまいました。

みんなは、風にあおられて空に舞い上がりました。

「やった、これで 自由になれる!」

みんなそう思いながら、ケヤキの木にむかって落ちていきました。

「あっ、しまった!」

クモが叫びました。落ちていく先に、練習用にはった巣が見えたからです。

それを聞いた神様は、とっさに近くにあった枝につかまりました。

猟師は 神様の足に、タカは猟師の足に、ヘビはタカの足に、カエルは、ヘビのしっぽに、クモは、カエルの足に、チョウは、クモの足につかまりました。

一列につながったみんなは、一晩中、台風の風にあおられながら、はげましあって飛ばされないように頑張りました。

**

夜が明けました。

台風は去って、穏やかな朝が訪れていました。

みんなは、そろそろとケヤキの木から降りてくると、お互いの頑張りをほめあい、無事を喜びました。

そして、

「元気でね」

と言い合って、それぞれの家に帰っていきました。

クモは、

「これからは、あんまり丈夫な巣を作るのはやめよう」

と思いました。

それから、クモの巣はあんなに切れやすくなったのだそうです。

#ぢーこのつぶやき

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